戦略コンサルティングファームの重い扉

不安の中コジ開けようとする僕への手紙

戦略コンサルティングファームの重い扉 ~不安の中コジ開けようとする僕への手紙

BCGで出会った親友である「慎 正宗」=慎さんに、なんか、書いてよ!ってお願いしたら、書いてくれました。

 

戦略コンサルティングファームの重い扉

不安の中コジ開けようとする僕への手紙

 

内容は僕が説明しても薄くなるだけなんで、彼の凄さを思いつくままに。

  • 「僕の事を嫌いじゃなければ、全員、好き」という心持ち。英語ペラペラで、ソロバンで足腰鍛えた「数字感」も小売プロと圧倒的にビジネスパーソンとして凄い。が、この心持ちこそ、圧倒的な「カリスマ」「チャーム」の源泉。
  • 「人生、ネタ作り」という心持ち。“やるのやめようかな”と尻込みするとき、この言葉と、「命までは取られない」という慎さんの言葉を思い出す。踏み込むからこそ、人生は面白くなる。“コンサル、OUTになるかも”尻込みしている方、反省です。
  • 「肩書きよりも面白さ」という心持ち。どうしても肩書きで、人を見てしまいがち。だが、見ない。というか、興味もない。から、真正面から人を見てる。から、本当の何かに気付いてくれる。

 

その最強の「心持ち」の天才、慎さんが、 コンサル、事業再生で何を感じ、何を学んだか?

そして、コンサルを目指す、皆さんに何を伝えたかったか? 私も読んで、ハッとしました。

では、慎さんを存分にお楽しみください。


戦略コンサルティングファームの重い扉

不安の中コジ開けようとする僕への手紙

 

はじめに

 

僕が初めて戦略コンサルティングファームの扉を叩いたのは、前回のブラックスワン、リーマンショック勃発の直前2008年6月。当時、僕はイトーヨーカドーの衣料品のバイヤーで戦略コンサルティングファームとは一体どんな仕事をする企業なのかも知る由もなかった。ただ、ご紹介頂いた方の「30代を鍛えるには素晴らしい環境」と言う虎の穴感に妙に魅せられ、赤坂見附紀尾井町ニューオータニ・ガーデンコートの重たい扉をノックした。(実際には受付の原賀さんに面接官を呼んで貰った。その後計7回の面接を受けさせられた)

 

それから12年。その間に戦略コンサルを7年、事業会社を5年やっている。ここに書いてある言葉は全て僕のtwitterの2019/12/15から2020/3/9までの約3カ月間に呟かれた言葉だ(@shinmasamune)。それらをコンサルティングスキルの中でも基本であり最も重要とされる技術「構造化」により再編集されたものだ。

 

読み返してみると25歳で社会に出て早17年のキャリア中でも特に30-33歳までお世話になったBCGでの3年半が、如何に僕の仕事観ひいては人生観に大きな影響を与えているかがよく分かる。

 

これは12年前、戦略コンサルティングファームの重い扉を不安の中コジ開けようとする僕への手紙だ。コンサルティングファームには君が想像するような頭脳明晰、分析バリバリの冷徹なロボットみたいなつまらない人間だけじゃなく、義理・人情・浪花節を大切にするウェットでウィットに富んだ人間も沢山いる事を是非知ってもらいたい。

 

内容は下記の7項目にカテゴライズした。

もちろん全くMECEではない(それはMcK OBにお願いしよう)。最初の2章はとっつきやすい様にコンサルティングファームに限らずビジネス実務で使えそうな仕事術やプロフェッショナルとしての心得をまとめた。

 

割と長く戦略コンサルティングや事業再生の現場に携わる中で「キレイな戦略」以上に、それを実行する「組織と人」こそ成果に繋がるキードライバーであると痛感している。という事で3章に「戦略と組織・人事」についての呟きを集めてみた。

 

その先の4章-6章では更に一段踏み込んで“人”に関わる呟きをまとめてみた。そこでは、“リーダーであること”、“挑戦者であること”、そして優れたリーダーや果敢な挑戦者になるために“人間力をどう磨くか”についての呟きをまとめている。

 

果敢な挑戦者・リーダーであり続けると、時に火中の栗を拾い修羅場に立たされる事になる。そんな時の励ましとして最終章に「修羅場の作法」をまとめた。僕も相当回数の笑えない修羅場経験があるので、是非笑いながら読んでほしい。

 

全くもって書き下ろしではなく、呟きをユルく構造化しているため、文脈や背景も分からず、整合性もとれてないかも知れない。が、そんな事はあまり気にせず、こんな奴でもそれなりにコンサルティング業界でサバイブできる、強いてはその先に事業会社や事業再生の現場で割と活躍出来るんだなとボンヤリでも感じてくれれば良い。

 

まだ見ぬ未知の大陸、戦略コンサルティングファームの扉に手をかける君の背中を少しでも押す事が出来れば、まとめた甲斐があったってもんだよ。それでは始めよう。


1. 戦略コンサルタントの仕事術

「仕事が出来るってどういうことですか?」と聞かれる事がある。僕は仕事が出来るという事は“相手に対する少しの気遣いの総和が大きい事”だと思っている。それには、こんな些細な事も含まれている。

コンサルタントはインタビューしたり、分析したり、スライド書いたり、ファシリテーションしたり、色々やるのだけど、最も重要な基礎スキルは何かと言われると僕は間違いなく“議事録”であり“ワード”(当時ストーリーラインは全てOutlookで書いていた)と信じている。ここで覚えて欲しいメッセージは一つだけで、それは“議事録を制する者は会議を制す”だ。

それ以外にも色々な仕事術TIPSがあるから頭の片隅に置いておくともしかしたら役に立つことがあるかもしれない。


リサーチのコツ

インタビュー/質問のコツ

インプットの貰い方

ホワイトボードの使い方

スライドライティング

プレゼンのコツ

等々、色々とやる事多いので基本的には最初は間違いなくパンパンになる。どれ位パンパンになるかと言うと

仕事が回らなくなると生活と心が荒み、更に仕事のパフォーマンスが落ちるという負のサイクルに入るので、それを防いで正のサイクルをブン回すのに大切な事は、“正しい問いを立てる”、“優先順位を決めて取組む”、そして“何をやらないかを決める”ということ。


2. プロフェッショナルの流儀

なんとなく戦略コンサルタントの仕事術のイメージがついただろうか?戦略コンサルタントは良くプロフェッショナルファームなんて呼ばれている。君が戦略コンサルタントであろうとなかろうと、お客様からお金をもらっている以上、プロフェッショナルである事を常に意識しなくてはならない。ということで、この章では事業会社・コンサルに関わらず、プロフェッショナルとして周りから頭一つ抜きんでるための心構えや所作ついての呟きをまとめてみた。

 

まず大きな仕事を成すためには、社内のみならず外部パートナーも含めて回りを動かさなくてはならない、特に新しい事や難しい事を仕掛ける場合、社内にはリソースやケイパビリティーが圧倒的に不足している。だからこそ、組織内にとどまらず外部パートナーをどのように選び、交渉し、付き合っていくかが成果に直結する。コンサルタントも当然外部パートナーなので、どんなクライアントであれば、共に成果を出せる・出しやすいかという見極めにも役立つと思う。

外部パートナーとの交渉術

会社の看板で外部パートナーを選ぶのは愚の骨頂。必ず顔の見える、そして信頼できる個人を指名して選ばないといけない。逆に言うと、コンサルタントの君がクライアントから看板名で呼ばれているとしたら、それは働き方を変えた方が良い。


外部パートナーの選び方

「お値段以上」の関係構築のためにフィーは極力抑えたいが、そこは必ずWIN-WINになる着地点を見つけないといけない。言いづらい事こそ腹を決め・腹を割り、こちらから話を切り出さなくては行けない。重要なポイントは「指し値」だ。


外部パートナーとの付き合い方

指名して、指し値して、腹落ちして共に戦う事を決意したのはベンダー・業者・先生ではなく“パートナー“だ。だからこそ、どんな時もリスペクトを忘れず対等なパートナーとしてお付き合いをしなければならない。


もちろん大きな事を成すためには、外部パートナーだけではなく上下左右含め組織内の多くの人間を巻き込み動かす必要がある。「聞いてねぇ」「総論賛成・各論反対」「過去の失敗経験」 ありとあらゆる出来ない理由を並び立て、挑戦を阻む輩が沢山いる。そういう輩は指一つ動かさなくても反対だけはする。古い・重い・硬い組織ほど、こういう輩が多い。でも怯んではいけない。どんな状況でも、誰が何を言おうが、プロフェッショナルは“Get the job done(仕事を完遂)”しなくてはならない。


失敗を恐れ挑戦しない組織を動かすには、一定程度の影響力を持たなきゃ行けない。自分の立場やフェイズに併せて、組織内での影響力をつけて行くために、こんな言葉を覚えておいてほしい。


3. 戦略と組織・人事

戦略コンサルタントになってしばらく経つと、筋の良さそうな戦略提言を行い、クライアントに評価され実行フェイズに入って行く事になるだろう。実行フェイズに入り暫く経つと気づく事になる。

  • あれ、おかしい?全く計画通りに進んでない、それどころか決まった事が現場にまともに共有すらされてない
  • これは誰がリードしていて、どうやって意思決定するんだろうか?
  • どう考えてもヒト・モノ・カネのリソースが足りてないぞ?
  • どうして、この人達は自分の会社の事なのに、丸投げなんだろうか?

この章のキーメッセージは一つ、それは“戦略と人事は両輪”。戦略とはやる事(やらない事)を決め、それを実現するために適正にリソース(ヒト・モノ・カネ・情報等)を配置する事だ。ハンズオンをどっぷりやればやるほど、“何はともあれ人”と言うことに気づく。“正しい人“を配置出来れば、モノもカネも情報も必ずブン取れる。逆に配置出来ないと、モノもカネも情報も流れが止まりプロジェクトは息詰まる。何をやるか・どうやるかも大事だが、圧倒的に大事なのは“誰とやるか”だと言う事を覚えておいて欲しい。


組織・人事において特に重要なのはリーダーの任命。戦略コンサルタントは得てして戦略を描く事に注力しがちだが、その戦略・施策を誰が実行するのかにこそ細心の注意と根回しをする必要がある。実行フェイズでは組織における“実質のキーマン”を出来る限り早く見極め、そのキーマンをどのようにプロジェクトに関わらせるかがプロジェクトの成否を決める鍵になる。


4. リーダーの資質

戦略を成果に繋げるために如何にリーダーの存在が重要かは伝わったと思う。4章~6章では自分自身が戦略実行をリードしやり切る人材になるための心得や心構えについての呟きをまとめてみた。立てた戦略は誰でもない君がやらなくてはいけない日が近くやってくる。その時に準備を始めたのでは遅い、今日からでもリーダーになる準備を始めよう。


5. 挑戦者たれ

戦略を実行するリーダーは必ず果敢な挑戦者でなくてはならない。挑戦や失敗を恐れる人間に変革を起こす事は出来ない。この不確実性の高い世界において、「唯一生き残る事が出来るのは変化出来る者である」とダーウィンは言ったと、みんな言ってる。僕の大好きな長州力は「誰も行かないなら、俺がフライングしてやるよ」と言っている。挑戦者たれ。


どんな場所・状況・仕事であっても自分なりの挑戦は出来る。“記憶に残る挑戦”と“失敗の繰り返し”が強いリーダーを育てる。だからこそ、目に見える結果や記録にだけ拘るのではなく、誰かの、何より自分の記憶に残る仕事に挑みやりきって欲しいと願っている。


6. 人間力の磨き方

人間力の磨き方は二通りあって、一つは“自分自身の心がけ”、もう一つは“身を置く環境”で決まる。一つ目の“自分自身の心がけ”で最も大切なことは、“素直さ”でありその素直さから生まれる“チャーム”だと思う。


“自分自身の心がけ”と並び、“身を置く環境”も重要。人間力を鍛えるのに適した環境は、これまた二つあって①自分より圧倒的に優れた人が集まる虎の穴、②火中の栗に溢れた修羅場。そんな虎の穴や修羅場では、生涯付き合う事になる師匠や戦友との出会いが多くあり、その出会いが更に君を成長させる。


7. 修羅場の作法

君がこの先、果敢な挑戦者でありリーダーを目指すならば、近い将来に多くの火中の栗が転がる修羅場に身を置くことになるだろう。僕も本当に笑えない修羅場を数多く経験してきた。そんな修羅場の中で覚えた「修羅場の作法」をまとめておいたので、「あ、これが修羅場か」と思った時は是非読み返して欲しい。


これまで事業再生の現場で沢山の修羅場を体験して来た。改めて最近気づいた真実も良い機会なので君に伝えておきたい。それは“再生=再び生み出す事”。今後、君が戦略コンサルタントとして、または事業会社のリーダーとして事業再生という修羅場に挑む時には是非この呟きを思い出してほしい。


おわりに

これだけを読むと僕をあまり知らない人は、ひたすら前向きで、どんな修羅場でもファイト一発・気合で乗り超えてきたゴリゴリの漢だと思うかもしれない。全くそんなことない。BCGの最初のプロジェクトで「お前には明日はない」と言われ、修羅場の事業再生案件では背中から斬り付けられ、傷だらけになり凹むし、失敗して落ち込みお腹痛くなる事も頻繁にある。

そんな時も必ず家族・仲間・師匠が助けの手を差し伸べてくれて、その支えがあってなんとか乗り越えているというのが本当の所だと思う。最初に飛び込んだ民事再生の靴下屋。仕事が出来ずに半年で部署移動にされた時、先輩の大戸さんからのこんな温かい言葉が無ければ、社会人としてスタートすらまともに切れてなかったと思う。

失敗や修羅場をなんとか乗り越えた後には、経験がつき、強くなり、周りに感謝し、素直になり、少し優しくなるのだと思う。つまり、僕みたいな無茶苦茶な人間が人並みに社会人として活躍が出来るようになったのは、沢山挑戦して、失敗して、助けて貰ってを繰り返しているからだろうと本気で考えている。

 

ここまで長くとりとめのない、オヤジの呟きに付き合ってくれて本当にありがとう。“はじめに”で語った目的“まだ見ぬ未知の大陸、戦略コンサルティングファームの扉に手をかける君の背中を少しでも押すこと”が果たして出来ただろうか。出来ていれば嬉しいし、出来ていなければ、他の人に話を聞くのも良いし、別のキャリアを考えて見るのも良いだろう。決めるのは君だ。一つだけ確かな事は、もし12年前に僕がこの手紙を貰っていたならば、戦略コンサルテォングファームの重い扉をあの頃よりも少しだけ自信を持って開く事が出来たと思う。今後もとりとめのないオヤジの呟きを続けて行くので、もし少しでも心に引っかかる部分があれば是非僕のTwitter(@shinmasamune)をフォローして、時には話しかけてみてください。

 

最後に、これから戦略コンサルタントを目指し、その先に日本を支えていく人材を目指す君に僕の大好きな座右の銘10選を贈ります。

 

座右の銘 十選
  1. 誰も行かないなら、俺がフライングしてやるよ
  2. 打席入る前にベンチ見んな
  3. 一か八か
  4. 1勝9敗
  5. ダメでも前に倒れろ
  6. やらずに後悔よりやって反省
  7. 踏み出せば、その一歩が道となる
  8. 失敗こそ胸張れ
  9. 常在戦場
  10. 殿は戦の華


近い将来、大きなステージで一緒に仕事が出来る事を楽しみにしてます。

君の盛大な人生を心から祈る!

 

2020/3/23

慎 正宗


 

【著者略歴】 

慎 正宗小売×戦略×事業再生を軸に事業会社及び戦略コンサルティングファームでキャリアを積み、2018年9月に三陽商会へ参画。経営戦略・企画、デジタル戦略のトップとして事業再生をリード。 事業会社では民事再生後の靴下メーカー福助の営業、イトーヨーカドーの衣料品MDとして現場レベルの事業再生を経験。またマネジメントレベルとしてファンド投資先の服飾雑貨メーカー(シカタ)の事業責任者、株式会社ジーユーでのMD責任者を歴任。戦略コンサルティングファームでは、BCGおよびKurt Salmonにおいて大手小売・流通クライアントを中心に経営戦略の立案・実行を支援やファンド投資案件に対するデューデリジェンスや投資後のハンズオンサポートをリードした。